映画バブルの感想と考察|万人受けを狙ってシャボン玉のように丸め過ぎた作品

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2022年4月28日にNETFLIX、そして5月13日に全国の映画館で公開された『バブル』。

私はNETFLIXで『バブル』を視聴した。私のこれまでの視聴経験から端的にこの映画を表現すると、「劇場版SPEC~結~」と「天気の子」を混ぜ合わせたものを極端までシンプルに削ぎ落としてしまったもの、という感じだ。

ネット上で見かける評判は概ね否定的なものばかりである。

その点については残念ながら私も同意せざるを得ない。

本記事では映画『バブル』の感想を述べるとともに、低評価に至ってしまった理由を考察する。

本記事は映画『バブル』『君の名は』『天気の子』のネタバレを含みます。未視聴の方はご注意ください。

目次

リアリティのなさが致命的

映画『バブル』はある日、東京に泡が降り、同時に東京中心部で謎の大爆発が発生。それによって東京が水没してしまったという設定だ。

つまり、舞台は現代社会であるわけだが、全くリアリティが感じられない。

立ち入り禁止区域の東京に容易に子供が入れるのはなぜ? なぜそんな危険なところでパルクールをしているの? 政府や大人はなぜパルクールを黙認しているの? 親がいないのはギリギリ分かるが、生活物資をかけてパルクールをする必要がある?

そう、東京都内だけ「パルクール」を是とする異世界のような社会が成立してしまっているのである。

映画を観続けていても子供たちが「パルクール」に情熱を捧げるに至った理由は分からない。

何となくアクションとして映えそうだから「パルクール」の要素を入れよう――そんな製作者側の意図しか見えず、論理的に物語を楽しもうとする層には一切受け入れられないだろうなという感じだ。

無論、面白さが勝れば細かいことはいいじゃんとなるのだが、残念ながらそうはなっていない。

「パルクール」の比重が不自然に大きすぎる、それが本映画の低評価に繋がっている理由の1つだろう。

観客の視聴体験を見誤っている

私は完全なる駄作というものは存在しないと考えている。

作品と言うのは、観る者の年齢や経験、視聴経験などによって左右される部分が多いからだ。

その観点で言うと、現代の日本人のほとんどは「君の名は」や「天気の子」などのアニメーションを視聴してしまっている。

それらの作品と比較した時、どうしても本作品は劣っているように見えてしまい、低評価に繋がってしまうのではないかと思う。

アニメーションは素晴らしいが…

本映画の作画は素晴らしい。泡の表現や退廃した東京の表現は美しいし、パルクールのシーンも迫力がある。

しかし、洗練されたアニメーションは「君の名は」などの新海誠作品で体感してしまっているのだ。

しかも水没した東京というシチュエーションは「天気の子」でも観てしまっている。

つまり、いくらアニメーションのクオリティは高くても、そこまでの新鮮さはないということなのだ。

ドラマ性も薄い

恋愛ドラマという点でも、入れ替わりというギミックを使用している「君の名は」の方が圧倒的に面白い。

本映画では、パルクールを通して共鳴し合い、ヒビキとウタが恋仲のような雰囲気になる。しかし、ここにドラマ性はほとんどないといっていい。

また、ブルーブレイズのメンバーとの間に深い友情が描かれているというわけでもない。(むしろ序盤の方では、ヒビキは嫌悪されていた)

ラストあたりで、ブルーブレイズのメンバーが総動員してヒビキのことをウタの元へ送り届けるシーンも、この辺の描写が圧倒的に足りてないので何だか表層的に終わるのである。

全編を通して描きたいことは分かる(ほとんど使い古された展開)のだが、圧倒的に深みが足りなかったと言える。

万人受けを狙い過ぎてしまった

監督を務めた荒木哲郎氏は、『バブル』に関するインタビューでこのように語っている。

ただ今回はアニメファンの方だけではなく、老若男女、なんなら嫁のお母さんのばあばとか自分の7歳の娘とかまでターゲットに含めるとしたらどうするかと考えた時、美しくて、かわいいものを作りたかったんです。そこにアクションの魅力を同居させたらこんな配合になりましたという気持ちです。

出典:animate Times(https://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1650955012)

今作のターゲット層が「老若男女から自分の7歳の娘まで」というところで、腑に落ちた。

降泡現象はなぜ起きたのか、なぜパルクールに没頭しているのか、シンの過去に何があったのか、そもそもウタとその姉は何者なのか――そんな複雑さ(説明)を削ぎに削ぎ落とし、誰にでも分かる作品になるように仕上げたものが『バブル』なのである。

確かに小学校低学年にでも見せられるストーリーになっているし、初めてアニメ映画を観るという年代にピッタリという感じだ。

本映画は誰にでも楽しめる作品を作ろうと努めた。しかし、それが悪い方向に作用してしまい、誰にも刺さらない無難な映画になってしまったというのが事の顛末だろうと思われる。

1クールアニメだったら面白かったかも知れない

映画『バブル』は省かれたと思われる要素が非常に多く、そこが不評に繋がっていると思われる。

おそらく1クールのアニメで丁寧にやっていたら、もう少し受けは良かったのだろうなと想像する。

ちなみに週刊少年ジャンプ+で『バブル』のコミカライズがされているのだが、こちらは映画とほぼ同じ内容が描かれているので、ストーリーを追いたいだけの人は漫画を読めばOK。

小説版で内容が補完されている?

映画公開に先んじて、4月21日にはバブルのノベライズ本が発売されている。

Twitterの呟きを見るに、小説やオフィシャルブックで省かれた要素が補完できるようだ。

というわけで、バブルを100%楽しむならば小説版を読んでみよう。

きっとモヤモヤのバブルが弾けるに違いない。

浅ノ月

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